職場で誰かが咳をしていたり、「最近風邪流行ってるよね」という会話を耳にしたりすると、急に自分の喉がイガイガしてくるような気がする人は多いのではないだろうか。さっきまで何ともなかったのに、意識した途端に体のあちこちが気になり始め、気づけば「なんだか熱っぽいかもしれない」と感じている。
一方で私は、昔からほとんど風邪をひかない。鼻水がしばらく続いたり、少し熱っぽく感じたりすることはあっても、寝込むほど体調を崩したことはない。周りで風邪が流行っていても、正直なところまったく気にしていない。
同じ環境にいても、すぐ体調を崩す人と何ともない人がいる。この差は体質や運だけではなく、「気にしすぎること」そのものが関係しているのではないか。自分の体験を振り返りながら、心理学の視点で考えてみたい。
ほとんど風邪をひかない私の体験
私の場合、体調を崩すといっても、せいぜい鼻水や喉の違和感がしばらく続く程度で終わる。寝込んだ記憶はなく、仕事を体調不良で休んだこともほとんどない。
周りで体調を崩す人が続いていた時期に、私も同じものをもらっていたと分かったことがある。ところが、本人はいたって元気で、言われなければ気づかなかったほどだった。
最近も、東洋医学でいう「外邪」が入ってきたような、少しすっきりしない感覚はあった。それでも普段どおり会社に行けたし、遊びにも行った。

周りが風邪ひいてるとか、風邪流行ってるよねとか、そういうのは本当にどうでもいい。
振り返ってみると、私は体調のことをほとんど気にしていない。そして、この「気にしていない」ということが、体調を崩さない理由のひとつなのではないかと考えるようになった。
「気づかない」ことも体調の感じ方のうち
自分が元気だと思っていても、実は体の中では何かが起きていたのかもしれない。ただ、本人がそれに気づかず、生活にも支障がなかったのなら、少なくとも日常の感覚としては何も起きていないのと同じである。
体調というのは、体の状態そのものだけでなく、それを本人がどう受け止めるかにも左右される。同じ程度の違和感でも、気にする人にとっては「不調」になり、気にしない人にとっては「いつもどおり」で終わる。体の感じ方には、心の向け方が思っている以上に影響しているのだ。
悪い思い込みが本当に不調を生む「ノセボ効果」
では、周りの風邪を気にする人ほど体調を崩しやすいのはなぜだろうか。よくあるのが、次のようなパターンだ。周りが風邪をひいていると、「なんか自分もそんな気がする」「あれ、ちょっと喉が痛いかも」と感じ始め、そのまま本当に具合が悪くなってしまう。
心理学には「プラセボ効果」という言葉がある。効き目のないものでも「効く」と信じていると、実際に気分や体調が良くなったように感じる現象だ。その逆が「ノセボ効果」である。「悪くなるかもしれない」と思い込むことで、本当に不調を感じてしまうのだ。
ノセボ効果:「悪くなるかもしれない」という思い込みや予想によって、実際に体の不調を感じてしまう現象。プラセボ効果の逆にあたる。
「周りが風邪をひいているから自分もうつったかもしれない」と考えると、意識が自分の体に向き、小さな変化に敏感になる。普段なら気にも留めない喉の乾燥や軽い鼻づまりを「風邪の始まり」として拾い上げ、本当に具合が悪いように感じてしまう。気のせいとはいえ、本人にとってはだるさも喉の違和感も現実のものなのが厄介なところだ。
心配が続くと、心も体も疲れやすくなる
思い込みが影響するのは、その場の感じ方だけではない。「風邪をひいたらどうしよう」「うつったらどうしよう」と心配し続けていると、それ自体がストレスになる。ストレスがたまると眠りが浅くなったり、疲れが抜けにくくなったりして、体調を崩しやすい状態をつくってしまうと言われている。
つまり、体調を守ろうとして不安になればなるほど、かえって心も体も消耗していく。心配すること自体が、体調にとってはマイナスになりかねないのだ。
周りに振り回される人と気にしない人の違い
体調を崩しやすい人には、いくつか共通する考え方のクセがある。ひとつは、体の小さな違和感をすぐに病気と結びつけてしまうことだ。少し喉が乾いただけで「風邪だ」と判断し、そこから不安がどんどん膨らんでいく。
もうひとつは、情報を浴びすぎることである。流行のニュースを何度も目にしたり、周りの人の体調の話を細かく聞いたりしているうちに、頭の中が「病気」のことでいっぱいになる。そうなると、先ほどのノセボ効果が起こりやすい状態が自然とできあがってしまう。
反対に、周りの風邪をほとんど気にしない人は、違和感があっても「まあ大丈夫だろう」と流し、普段どおりの生活を続ける。私がすっきりしない感覚を抱えながらも会社に行き、ビリヤードをしていたのもこれに近い。気持ちが体調のほうに引っ張られないので、ストレスもたまりにくい。
小さな違和感を
すぐ病気と結びつける
違和感があっても
普段どおりに過ごす
「自分は絶対に風邪をひかない」という思い込みの力
私には、もうひとつ心当たりがある。

自分は絶対に風邪をひかないって、昔から思ってる。
この感覚には、プラセボ効果に近い良い面がある。余計な不安を抱えないことでストレスが減り、ちょっとした違和感に振り回されずに済むからだ。しかも私の場合は、長年大きく体調を崩していないという実績があるので、その思い込みがさらに強くなる。
「ひかないと思っているからひかない、ひかないからさらにそう思える」という、いい循環ができているのだと思う。
ただし、思い込みだけでどんな不調も防げるわけではない。体質や生活習慣によっても差は出るし、「大丈夫」と思えることを理由に、明らかにいつもと違う不調まで無視してしまうのは考えものだ。
周りに振り回されないための習慣
気にしすぎてしまう人が、いきなり「何も気にしない」状態になるのは難しい。まずは次の3つを意識するところから始めるとよい。
流行のニュースを何度もチェックしたり、周りの体調の話題に深入りしたりするのは控え、必要な情報だけを確認したら頭を切り替える。
喉が少し気になっても、まずは水を飲む、部屋の乾燥を見直すなど、別の原因を考えてみる。それで治まることも多い。
よく眠り、普段どおり食べ、いつもの予定をこなす。多少の違和感があっても動けるなら、普段どおり過ごすほうが気持ちも安定しやすい。
まとめ
気にしすぎる人ほど体調を崩しやすいのは、ノセボ効果によって小さな違和感を不調として感じやすくなることと、心配が続くことで心も体も疲れてしまうことが重なるからである。私がほとんど風邪をひかないのも、周りの流行をまったく気にせず、「自分はひかない」と思い込んでいることが大きいのだろう。
周りで風邪が流行っていても、情報との距離を取り、違和感を病気と決めつけず、普段どおりの生活を続けることが、気持ちを振り回されないための一番の近道になる。そのうえで、いつもと明らかに違う不調が続くときは、無理をせず医療機関に相談してほしい。



コメント