検索で十分な時代に本を読む意味とは?予定外の知識に出会う寄り道読書のすすめ

教養・思考

知りたいことがあれば、検索すればすぐに答えが出てくる。AIに聞けば、要点だけをまとめて返してくれる。そんな時代に、わざわざ時間をかけて本を読む意味はあるのだろうか、と感じている人は少なくないと思う。

とくに、物や情報を減らしてシンプルに暮らしたい人ほど、読書は効率が悪いものに見えやすい。知りたいことにたどり着くまでに、関係のない話や寄り道がたくさん含まれているからだ。

ただ、私はその寄り道こそが読書のいちばんの価値だと考えている。ここでは、三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』にある「情報」と「知識」の考え方をヒントに、検索では手に入らない本の良さと、寄り道を楽しむ読み方を考察してみたいと思う。

検索だけでは「知らないこと」に出会いにくい

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』では、「情報」と「知識」の違いが語られている。情報は自分が知りたかったことそのもので、知識にはそれに加えて、予想していなかった文脈や偶然出会う事柄、いわば「ノイズ」が含まれている、という考え方だ。

情報

自分が知りたかったこと
そのもの

知識

知りたかったこと
+予想外の文脈(ノイズ)

検索は情報を手に入れるにはとても便利だ。「ヒュームの倫理思想」と調べれば、概要はすぐにわかる。ただ、検索できるのは、自分がすでに「知りたい」と思っているものだけだ。そもそも存在を知らないものは、検索のしようがない。

検索では、知りたいことは探せる。
でも、知らないことは探せない。

必要な情報だけを集め続けると、自分がすでに知っている世界の延長線上でしか物事を考えられなくなる。新しい視点を手に入れたいなら、自分では選ばなかったものが入ってくる場所を、どこかに残しておいたほうがいい。

本の寄り道が、知識どうしをつなげていく

本を読んでいると、最初の目的とは関係のない話がたびたび出てくる。ヒュームについて読んでいたはずなのにカントが登場し、そこから「そもそも善い行為とは何か」という別の疑問が生まれる。小説を読んでいて、以前読んだ哲学や心理学の話とふいにつながることもある。

一冊の本を読む
▼
予定外の人物や考え方に出会う
▼
興味が別の本へ広がる
▼
以前読んだこととつながる

効率だけを考えれば、こうした寄り道は無駄に見える。しかし、その場では必要性がわからなかった知識が、数か月後に別の本を読んだときにつながり、初めて意味を持つことがある。私は、この「あとからつながる」感覚こそが、検索では味わえない読書の面白さだと思っている。

一冊を完璧に読み切らなくてもいい

本を読むのが続かない人の中には、「一冊を最初から最後まできちんと理解しなければ」と考えている人も多い。けれど、知識を広げるという意味では、一冊を完璧に読み切ることにこだわらなくてもいい。

途中で興味が別のテーマに移ったら、そちらの本に手を伸ばしてもかまわない。何冊かを行ったり来たりして、どれも途中になってしまうこともあるだろう。それでも、興味が横へ広がっていく読み方のほうが、結果的に頭の中で知識がつながりやすい。少なくとも私は、寄り道をなくした読書はかなりつまらないものになると感じている。

ミニマリストこそ、読書の寄り道を楽しめる

物を減らすことと、余計な知識まで受け入れることは、一見すると矛盾しているように思える。しかし実際には、身の回りの物や管理しなければならないことが減ると、そのぶん時間にも気持ちにも余裕が生まれる。その余裕があるからこそ、すぐには役に立たないことにも付き合えるようになる。

私自身も、物を減らしたことで読書から遠ざかるどころか、また本を読もうと思えるようになった。大切なのは、すべてのノイズをなくすことではなく、減らすノイズと残すノイズを分けて考えることだ。

減らしたいノイズ

管理しきれない物
鳴り続ける通知
なんとなく見るSNS

残したいノイズ

本の中の寄り道
予定外の知識
偶然の出会い

生活のノイズは減らして、
読書のノイズは楽しむ。

寄り道読書を楽しむためのコツ

寄り道する読み方は、少し意識するだけで始められる。次のような順番で試してみると取り入れやすい。

1
目的より「面白そう」で本を選ぶ
答えを探すためではなく、気になったという理由だけで手に取ってみる。
2
気になった人名や言葉をメモする
本の中で引っかかった名前や考え方を書き留めておくと、次の本を選ぶ手がかりになる。
3
興味が移ったら別の本へ移る
読み切ることにこだわらず、気になったテーマの本へ手を伸ばしてみる。
4
生活のノイズを一つ減らす
通知を切る、なんとなくの動画を一本減らすなどして、読書に使える余白を作る。

最初から読書の時間を大きく確保しようとしなくていい。生活の中のノイズを一つ減らすだけでも、本を開く余白は意外と作れる。

「余白」と「空白」は違う

ミニマリズムでよく語られる「余白」と、ただ何もない「空白」は、似ているようで少し違うのではないかと私は考えている。

余白:まだ知らないものが入ってこられるように、あえて空けておく場所。

空白:何も入れないために、ただ空いている状態。

物を減らして生まれたスペースや時間を、何もない状態のまま保つこともできる。けれど、そこに読書からやってくる予定外の知識を入れてみると、暮らしはシンプルなまま、頭の中は少しずつ豊かになっていく。生活は整理しておきながら、頭の中くらいは、いろいろな本や考え方が少し雑然と置かれているくらいがちょうどいい、と私は思う。

まとめ:生活は身軽に、知識は寄り道しながら広げる

検索やAIを使えば、知りたい情報はすぐに手に入る。ただ、それだけでは自分が知らないことに出会う機会は少ない。本の中にある寄り道や予定外の知識は、効率の面では遠回りでも、あとから別の知識とつながって意味を持つことがある。

物を減らしてシンプルに暮らしている人ほど、その余白を読書の寄り道に使ってみてほしい。まずは「面白そう」と思った一冊を手に取り、気になったところから横へ広げていくところから始めてみるといい。

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コメント

  1. Lia do Transcreva より:

    情報と知識の違いについて考えるきっかけになりました。必要な情報だけを追う毎日ですが、以前の会議録音を文字にして見返した時に、思わぬ気づきがあったことを思い出しました。音声を整理するときは o Transcreva も使いながら、余白のある読み方を大切にしたいです。

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